岩手県内で唯一、家庭ごみ処理費を手数料化している北上市の指定ごみ袋が「高い」「不公平だ」と市民に不評だ。２００８年の導入以来、１枚６３円（４０リットル）と東北最高クラスの価格を維持する。市は、ごみ減量や財源確保につながる成果をアピール。ごみ袋の使用継続に理解を求めるが…。（北上支局・江川史織）
６月中旬のある朝、住民が続々とごみを集積所に運び出した。「燃えるごみ」の収集日。カラス対策の黄色い指定袋はどれも満杯で、はち切れそうだ。
重たそうな袋を自転車に積んでやってきた主婦（８２）は「袋がもったいない。パズルのように隙間なく入れるのがこつ」と苦笑した。袋が裂けないよう、内側に厚紙を巡らせるなど工夫を凝らしているという。
別の女性は「刈り取った庭の草は干してかさを減らす」と涙ぐましい努力を明かす。ほかにも「高い割に低品質」「新型コロナ禍で苦しい家計を圧迫する」との嘆きが漏れる。
ごみ処理費を手数料化する東北の自治体のうち、人口５万以上の市のごみ袋価格は表の通り。北上市は米沢市と共に他市を引き離す。ごみ袋製造や収集運搬、焼却処理といった一連の経費を価格に転嫁しているためだ。
一方、手数料化していない岩手県内の自治体は、分別の便宜上、独自のごみ袋を市場価格で販売する。北上市に隣接する花巻市の推奨ごみ袋の場合、ドラッグストアで買えば１枚１０円前後（４５リットル）だ。
中でも、盛岡市は指定袋がなく「透明か半透明」とだけ規定する。市資源循環推進課は「市民の利便性を考慮した。ホームページなどで分別を周知し、排出量削減に努めている」と説明。県内自治体間の「格差」が際立つ。手数料化が進まない現状に、県の担当課は「各自治体で住民の理解が進まず、簡単に踏み切れないのが正直なところ」と打ち明ける。県全体のごみ排出量は増加傾向にある。
北上市民の不満を払拭（ふっしょく）しようと、市政策企画課の職員でつくる市近未来政策研究所は昨年４月、「なぜ北上市のごみ袋は高いのか？」と題した政策リポートを公開した。手数料化の狙いや結果を図説している。
ごみの量に応じて処理費用を負担する仕組みは、納税義務のないビジネスマンなど一時的居住者が多い市に適した方法と主張。ごみ袋価格の根拠となる計算式も掲載する。
市民１人当たりのごみ排出量は、手数料化後の１０年で２３０キロ削減されたことも指摘。手数料化で浮いた税金は年間約１億円に上り、他の政策に生かせるメリットを挙げる。
ただ、世帯数の増加や料金負担への慣れもあり、排出量は近年微増。想定した削減の目標値を下回る。市環境政策課は「資源ごみに回せばリサイクルできる。分別意識を見直してほしい」と呼びかける。
市民の辛抱はしばらく続きそうだ。
［家庭ごみ処理費の手数料化］ごみの収集や運搬、処分といった処理全般に発生する経費を有料化する仕組み。自治体ごとに料金が異なり、多くはごみ袋価格に上乗せして徴収している。手数料化している市町村の割合は、岩手県が３％で全国ワースト１位。東北では山形県の８６％が最高で全国平均を超える。秋田６０％、青森５０％、福島４４％、宮城３４％と続く。
関連リンク
関連タグ
北上市ごみ袋「高い」と不評 処理費上乗せで… 減量や財源確保になるけれど - 河北新報オンライン
Read More
No comments:
Post a Comment