撮影/岡村啓嗣
日本ラグビー界の礎を築いた故・平尾誠二氏と、「ヒトiPS細胞」の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授(61歳)。異なる分野で活躍する、2人の知られざる友情を描いた『友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の約束」』(講談社文庫)がドラマ化。11月11日〈土〉にテレ朝系で放送され、大きな反響を呼んだ。放送を記念して、ドラマの原作本となった大ヒット書籍から、山中教授が平尾氏との思い出を語ったパートを特別公開する。
『友情』連載第2回後編
前編記事【「死んでも頑張る」体育館系思考を否定…山中伸弥教授が明かす、「ミスターラグビー」平尾誠二の「繊細な感性」】
娘を持つ父親として
僕らが親しくなってしばらくすると、家族ぐるみのお付き合いも始まりました。
外で会食するだけでなく、お互いの自宅でお会いしたこともあります。家内と平尾さんの奥様の惠子さんは歳が近く、うちの長女と平尾さんのお嬢さんも同世代なので、すぐに仲良くなりました。
平尾さんが病気になる数ヵ月前だったと思いますが、お嬢さんの結婚の話を聞いたことがありました。
「この前、夕方に娘に会ったら、『今日、籍を入れました』と言いよったから、『なんや、そうなんか。なら乾杯でもするか』と言うて乾杯したんですよ」
入籍の日を事前に聞いていたのに、憶えていなかったのかもしれません。あるいは、彼のことだから、本当は知っているのに照れてそう言ったのかもしれません。
娘が嫁ぐということは、男親にとってかなり大きなイベントです。平尾さんにとってもそうだったと思うのですが、意外なほどあっさりしていました。
僕も最近、長女が入籍しましたが、直前までいつ入籍するか知らされず、ある朝、寝起きを襲われて「婚姻届に証人が要るからハンコを押して」と言われ、わけがわからないままハンコを押しました。
いつ娘が泣かせる言葉を言ってくれるのかなと思っていたら、
「二十七年間ありがとう。じゃあ、バイバイ」
想像していたのとはだいぶ違い、「えーっ、それで終わり?」と肩すかしをくったような気になったものです。
娘を持つ父親として、平尾さんのように淡々としてはいられませんでした。
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