フェラーリの中古車相場は他のメーカーとはまったく異なる。新型車に関しては新車より中古車が高いなんて当たり前で、現在確認されている限り最も高い値段で取引されたのもクラシックフェラーリである。ではなぜフェラーリだけ一人勝ちなのか。その理由を探ってみたい。
文:藤野太一/写真:ベストカーWeb編集部
■フェラーリを支えるF1参戦の歴史
フェラーリの創始者である「エンツォ・フェラーリ」。「100人が欲しがるなら99台だけ作れ」という名文句はあまりにも有名
フェラーリはなぜ高いのか。それは圧倒的なブランド力によるものだ。毎年、世界でもっとも価値のある企業をランキングしている英国の企業ブランド評価コンサルティング会社ブランド・ファイナンスによる「Brand Finance Global 500」においてもフェラーリは過去に何度もトップの地位を獲得している。
ではそのブランド力をどうやって培ってきたのか。それは創始者であるエンツォ・フェラーリにはじまったマーケティング戦略に基づいて構築されたものだ。
自動車の歴史はレースの歴史でもあり、競争が優れた製品を生み出してきた。フェラーリにとってその舞台がF1だ。
1950年に始まったF1世界選手権においてこれまで一度も撤退することなく、シャシーとパワートレインを自社開発するフルワークス体制で参戦し続けているメーカーはフェラーリをおいて他にない。フェラーリが派手な宣伝広告を打たないのは、F1が最大の宣伝の場であるとの考えからだといわれる所以だ。
■誰でも買えるわけではないフェラーリの新車
もちろん魅力的な製品開発は大前提としてマーケティング戦略上、生産台数は常に需要よりも少なく設定する。特に人気のV8シリーズや、現行ではV6+ハイブリッドになった296シリーズなどは、札束を握りしめてディーラーへ向かったとしても一見さんお断り状態のようだ。
ブランド初のSUV「プロサングエ」や新たな12気筒モデル「12 チリンドリ」なども発表前に生産枠は完売しているとも噂される。認定中古車を購入するなどして修行を積んでようやく新車購入の権利を得ることができるわけだ。
さらに稀少なスペチアーレなどの限定車は、これまでの購入実績によって購入の可否を判断されるという。就活でいうところの完全なる売り手市場ができあがっているのだ。
■高額車であっても右肩上がりで成長するフェラーリ
新車を買えない人が中古車を購入するため、中古車相場は高値安定する。実はロレックスもエルメスのバーキンもブランド価値を下支えするのは再販価値の維持にある。それはフェラーリも同様であり、そのためにさまざまな施策が打たれているのだ。フェラーリの2023年の世界新車販売台数は1万3663台。近年右肩上がりで成長を続ける。
そして国内の2023年度の新規登録台数(JAIA調べ)は1407台。ざっとではあるがおよそ1割が日本にやってきている計算になる。電動化の波が押し寄せるなか、フェラーリとてこのまま右肩上がりで高値安定を続けるのは容易なことではないだろう。2025年に登場するというブランド初の電気自動車(BEV)が今後を占う試金石になるのかもしれない。
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