より高性能な全固体電池の材料開発に期待
大阪公立大学の研究グループは2023年6月、固体電解質の材料であるLi3PS4を急速加熱し結晶化させることで、α相と呼ばれる高温相を室温で安定化させることに成功したと発表した。より高性能な全固体電池の材料開発につながるとみられる。
全固体リチウム電池は、高い安全性やエネルギー密度を備えた次世代蓄電デバイスとして注目されている。これを実現するためには、固体中をリチウムイオンが高速に移動できる固体電解質材料が必要となる。この1つがLi3PS4である。
Li3PS4は、4種類の固体状態が存在するという。「α相」「β相」「γ相」と呼ばれる、温度によって結晶構造が異なる3種類と、熱力学的非平衡相の「ガラス」である。ところがこれまで、高温相(α-Li3PS4)を室温で安定化させることは、できていなかったという。
研究グループは今回、ガラスを結晶化させるための熱処理条件として、「到達温度」と「保持時間」に加え、「昇温速度」にも着目した。実験では、Li3PS4を1分間で約400℃も上昇させる速度で、約280℃まで急速加熱。その後、室温まで急速冷却した。この結果、高温相の結晶構造でみられる特徴的なX線回折パターンが観測されるなど、高温相のα-Li3PS4を室温で安定化させることに成功した。
これとは別に、1分間に約100℃上昇させる速度で約280℃まで加熱処理したLi3PS4では、中温相でみられるパターンが観測されたという。このことから、同じ熱処理温度でも昇温速度によって結晶構造は異なることが分かった。
また、α-Li3PS4は、25℃で10-3Scm-1程度のイオン伝導性を示した。この値はβ相より約10倍、γ相より約1万倍も高いイオン伝導性となることを確認した。
今回の研究成果は、大阪公立大学大学院工学研究科の木村拓哉氏や稲岡嵩晃氏、井澤遼氏、中野匠氏、保手浜千絵研究員、作田敦准教授、辰巳砂昌弘学長および、林晃敏教授らの研究グループによるものである。
室温で高いイオン伝導性を示す固体電解質を開発 - EE Times Japan
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