米国の追加利上げの織り込みが進み、投機筋の円売りポジションが膨らむ中で半年ぶりの高値を付けたドル・円相場。野村証券では、ここから1ドル=145円まで上昇するにはハードルが高く、むしろ米経済指標の下振れなど悪材料が出た場合、ドル・円は大きく下落しやすいとみている。

為替のトレーディングルーム
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg
一時は7月までの利下げ実施の可能性を織り込んでいた米金利スワップ市場は一転、現在は同月までの追加利上げ実施をほぼ完全に織り込んでいる。堅調な米経済統計や金融当局者からタカ派発言が続いていることが背景だ。発表された統計と事前予想との乖離(かいり)を指数化した米エコノミック・サプライズ指数は昨年1月以来の高水準となっている。
後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、米金融政策を巡る市場と米金融当局のギャップは相当解消されたと分析。利上げの織り込みが進展済みであることや投機勢の円売りポジションがたまってきたことを踏まえると、「ここから145円にいくのはハードルが高い」との見方を示す。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、国際通貨市場(IMM)における非商業部門の円の対ドルで売り越し規模は23日時点で8万枚を超え、昨年10月以来の高水準となった。中でも、レバレッジファンドの円の売り越しは同6月以来の大きさに達し、アセットマネジャーは3カ月ぶりに円買い超から円売り超に転じた。

29日の東京外国為替市場のドル・円相場は一時140円92銭と半年ぶり高値を更新。前週末に発表された4月の米個人消費支出(PCE)統計でインフレと消費者需要の強さが示されたほか、週末に米債務上限交渉が原則合意に達したことで、ドル買い・円売りが優勢となっている。
後藤氏は、債務上限問題に対する楽観論が相当織り込まれたという意味でも「ドル・円はいっても142円ぐらい」と予想。むしろ、週内に米雇用統計など重要統計の発表を控え、「ネガティブサプライズが出た際にはポジション調整の買い戻しが出やすい環境で、円高方向の動きが大きくなりやすい」と警戒感を示している。
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