マーケティングはビジネスを成功に導く武器です。しかし、その領域は広範で専門性が高いことに加え、テクノロジーの進化や消費者ニーズの変化を常に反映させる必要があるため、簡単に扱えるようにはなりません。にもかかわらず、基本の学び方を理解せずに迷子になるマーケターが後を絶ちません。本連載では「マーケティングの学び方を学ぶ方法」を解説します。マーケティングの学習法を身に付けて初めて、マーケターのスタートラインに立つことができます。トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」開校です。
前回は、学習効率を加速させるアウトプット術の1つ目として、アウトプットの目的と心構え、「考える」ことと「書く」ことの重要性、そして具体的な方法について解説しました。
続く今回は、学習効率を加速させるアウトプット術の2つ目として、学んだことから本質を抽出し、法則やパターンを見いだす(抽象化する)方法について解説します。
なぜ事例学習は危険なのか
本連載の第3回、マーケ事例だけを学んでも“再現性”は高まらない 「筋の良い学習プロセス」の中で「How-Toや事例学習に注意!」と警鐘を鳴らしました。なぜそんなにも事例(だけの)学習が危険なのか。それは、事例が「具体の権化」だからです。
A社の成功事例は「A社特有のマーケティング課題を解決するために実施した施策によって、A社の課題が解決した事例」です。その成功事例はA社の商品特性、強みや弱み、顧客基盤、競争環境、使える予算、タイミングといった最適性などが合致したから成功したのであり、B社がそのまままねても前提が違いすぎてうまくいきません。
ここで行うべきは、A社の成功事例(=具体)を完コピして自社にも採用することではなく、A社が実施して成功した「具体」から本質を抽出し、他社の事例(具体)も取り入れながらパターンや法則性を見いだすことです。これが「抽象化」といわれる作業です。
現場では「理論やフレームは抽象的すぎて現場では使えない」「事例があれば分かりやすい」といった声が根強いですが、逆に「具体的な事例やTips」から “自社が” 成功する具体的な戦略など描けるのでしょうか。そんなことは絶対にありません。筋の良い戦略は、必ず「具体→抽象→具体」の縦移動からしか生まれないからです。
現場での実戦力は「抽象化力」に比例する
再現性の高い筋の良い戦略を立てることができるようになるためには、具体と抽象を縦横無尽に行ったり来たりできる力が必要です。
ビジネスコンサルタントで著述家の細谷功氏は、著書『「具体⇔抽象」トレーニング』(PHPビジネス新書)の中で「抽象化とは、ごく少数の言葉や図形で森羅万象を説明すること」とし、下図左の小さな正三角形が、右の大きな正三角形に変化していくことを「知の発展」と定義しています(本書は、本連載の『マーケティング学習の「必読書44選」 300社超の大企業を支援したマーケターが推薦』でも紹介しましたが、全マーケター必読の書です!)
細谷氏は、同書の中で問題解決には3つのパターンがあるとし、縦移動のない水平のみの論理展開は「筋が悪い」と述べています。
この(素晴らしく抽象化された)フレームを用い、よくあるマーケティング学習(インプット)からアウトプット(実戦)への流れを考察してみましょう。
(1)具体インプット→具体アウトプット
- A社の成功事例を学ぶ→A社の成功事例をまねする
- (TikTokがアツいとの評判を知る→)TikTokの本を読む→TikTokに取り組む
- (Z世代が注目されていると知る→)Z世代の本を読む→Z世代対策を講じる
(2)抽象インプット→抽象アウトプット
- 「◯◯はもう古い! 次は××だ」と学ぶ→◯◯をやめ、××を始める
- 新しい購買プロセスを学ぶ→それに当てはめて自社の戦略を練る
- ブランド戦略理論を学ぶ→理論に沿って戦略を策定する
(3)具体インプット→抽象化(思考)→具体アウトプット
- A社の成功事例を学ぶ→複数企業の成功事例から本質を抽出し、パターンや法則を見つけ出す→自社が採るべき施策を検討する
- 話題の新手法を学ぶ→何が新しいのかを抽出し、自社が取り組むべきかどうか考える→取り組むべきと判断した場合、自社にとって最適なチューニングを行う
- 新しい購買プロセスを学ぶ→何が新しいのか、以前のものは何がどう古くなったと言われているのか、本質を抽出し、自社が対応すべきことを考える→対応すべき場合、自社にとっての正しい購買プロセスを再設計する
(3)で示した内容が「具体→抽象→具体」の縦移動です。
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