WBCのライバル国で選出の始まった代表メンバーを見ていると、どうしても力関係では日本よりも格上となる。その中でどういう野球をして勝利に近づけるか。必然と、ディフェンスを中心に守り勝つ野球になってくる。

日本代表先発の石川柊太(撮影・江口和貴)
日本代表先発の石川柊太(撮影・江口和貴)

初回に2点を先制したが、このリードを守り切ることが本番ではベースになる。だがこの日は日本ハムに4回に一時逆転を許した。きっかけとなったのは「1球」だった。

先頭の江越に対し、石川-森のバッテリーは初球カーブがボールとなり、ストライクを取りに行った2球目の直球を左翼線二塁打とされた。初回の第1打席は全6球を直球勝負。3ボールから、さらにボールゾーンへ3球が続いたが、すべて空振りするほど、見極めもタイミングも合っていなかった。

レギュラーシーズンの対戦なら、合っていない直球が打たれるまで軸球となるのは理解できる。だから江越にファーストストライクで直球を選択したのだろうが、結果的には対応された。国際試合になると、なおさらレベルの高い打者は2巡目以降は柔軟に変化できる能力を持つ。

4回表日本ハム無死、二塁打を放つ江越。投手石川(撮影・垰建太)
4回表日本ハム無死、二塁打を放つ江越。投手石川(撮影・垰建太)

私も06年WBCの米国戦でマスクをかぶった。1巡目、米国は先発した上原浩治のフォークに対応できていなかった。2巡目は「どうだろうか?」と警戒しつつ、フォークを交えるとジーターやチッパー・ジョーンズといった強打者はフォークへの意識も高めつつ、他の球種にも対応していた。フォークだけに意識が向いているのであれば、他の球種で打ち取りやすい。だが待ち球のバランスに偏りがなく、攻略が難しかった。だからこそ国際試合のリードは、神経を払う必要がある。

4回は江越の二塁打を起点に1点を失い、2死二塁で、さらに「1球」が分岐点となった。上川畑に2-2からの際どい内角低め直球をボールと見逃された。森のキャッチングが少し垂れ気味で、きっちり止めていればストライク判定でもおかしくなかった。フルカウントから上川畑に同点適時打、続く宇佐見に勝ち越しの適時二塁打を浴びて、一気に逆転された。

4回表日本ハム2死一塁、宇佐見に適時二塁打を許しぼうぜんとする石川柊太(撮影・垰建太)
4回表日本ハム2死一塁、宇佐見に適時二塁打を許しぼうぜんとする石川柊太(撮影・垰建太)

最終的に逆転勝利を収めた。野球なので、逆転される展開も必ずある。その中で粘り強く、再逆転することも大事だ。逆転2ランを放った森の打撃も光るものがある。だが相手国に確かな力量がある状況で、侍ジャパンが世界一を目標とするのであれば、「1球」を突き詰めていくことで、勝つ確率が上がってくる。(日刊スポーツ評論家)