驚異の高収益を誇り、時価総額では国内トップ5の常連であるキーエンス。ビジネスパーソンなら誰でも気になる企業の実情に迫った日経ビジネスの書籍『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム』は2022年12月の発売直後から大好評だ。本書の中から、今のキーエンスにつながる歴史をひもといたパートを紹介する記事の第2回。前回はこちら。
「一流の医者は、人の命を救うために常に最新の医療知識や技術を学び、習得して、最善の治療をする。リード電機が目指す営業とはそういうことです」――。今からおよそ40年前、キーエンスの前身であるリード電機の会社説明会での言葉に膝を打った大川和義氏(後にキーエンスのバーコードリーダーなどの事業部の責任者や人事部のマネジャーなどを歴任)。見事に入社試験をクリアし、1984年1月、リード電機に中途入社した。その大川氏を待っていたものとは。
大阪市にあるキーエンスの本社内には至る所に「化石」が置かれている。「キーエンスは化石にはならない」という創業者からのメッセージだ
入社初日、大川和義氏はリード電機の創業者、滝崎武光氏(現在は取締役名誉会長)との個人面談でいきなり度肝を抜かれた。
「大川さん、月曜日の朝起きたときから金曜日の夜寝る前まで、ずっと仕事のことを考えてくださいね」――。こう言われたのだ。
前職では、朝出社したら「昨日は巨人が勝ったな」などと雑談をするのは当たり前だった。そうではなく、朝起きたときから「会社でこれをしよう」と考えて準備を進めてほしいというのが最初のメッセージだった。
「えー!っと思いましたね。だから、とても強いインパクトが残っています」と大川氏は回想する。
ちなみに、今も業界では「キーエンスは私語禁止らしい」と噂されている。しかし、実際にキーエンスの営業所に足を運んだところ、所内では社員たちが活発にコミュニケーションを取っていた。誰もしゃべらない殺伐とした職場ではない。ただ、業務に必要のない無駄話は必要ないという考え方を長年にわたって貫いてきたのだろう。それが「私語禁止」という噂につながったようだ。
「誇らしげに名刺を出せる会社に」
大川氏は社員が80人ほどだった当時の風景を頭に思い浮かべる。「売上高は30億円規模だったでしょうか。いわゆる中小企業でした。当時社長だった滝崎さんも社員と一緒に机を並べて仕事をしていました」。まだ設立から10年程度。「ほんまのベンチャー企業でしたね」(大川氏)
その年、大阪府高槻市内に建てた本社ビルのお披露目で滝崎氏が社員らを集め、自身の夢を語ったことがあったという。
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「あまりに普通で、取材しがいがないでしょう」。あるキーエンスOBはこう言っていた。確かにとっぴなことをしているわけではない。だが、普通じゃない部分があった。とにかく手を抜かないのだ。「当たり前のことを当たり前にやる」。社員やOBがそう表現する背景には、行動を変えるための巧妙な仕組みがあった──。日経ビジネス記者が徹底取材でキーエンスの“仕組み”に迫った書籍を刊行しました!
「日本一給料が高い会社に」 キーエンス創業者が80年代に語った夢 - 日経ビジネスオンライン
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