
キリンビールの今村恵三執行役員は、「楽しめるビール」を提供できなければ若者を引き寄せられないと説く
「よく『若者のビール離れ』といわれるが、違うと思う。我々の近づく努力が足りなかったんだ」。キリンビールのマーケティング部長を務める今村恵三執行役員は、自戒を込めてこう強調する。
10月に発売したビール「スプリングバレー ジャパンエール<香>」は、個性的なおいしさを求める消費者に向けた新商品だ。かんきつ系の爽快な香りが特徴で、自社で品種開発した国産ホップの「ムラカミセブン」と「イブキ」を使用。約60年前から提携している岩手県遠野市で、農家と新品種の栽培方法を二人三脚で模索してきた。
農家の後継者不足により、国内のホップ生産は過去10年で5割減少している。消滅の危機から守るというストーリーも、経験や哲学に価値を見いだす「コト消費」の一環と捉える。

「スプリングバレー ジャパンエール<香>」は、キリンビールが自社開発した国産ホップ2種類も使用
価格帯は、やや高水準に設定。350ml缶の店頭実勢価格は267円前後で、定番品の「一番搾り」より2割高い。一方、酒税の改正で10月からビールの税額は1缶当たり6.65円下がった。各社のビール値下げが目立つ中、あえて高価格品を同時投入したのだ。
ピーク比3分の1の市場規模
国税庁によると、国内のビール課税数量は2022年度(速報値)で220万キロリットル。ピークだった1994年度の約3割まで縮小した。
かつては大学生も社会人も「一気飲み競争」に興じるなど、大量消費を彩っていた。ただ、パワハラ撲滅や健康志向が広がる中、今の若者は「飲まされる酒」を拒否する。新型コロナウイルス禍で、居酒屋に行く機会が減ったのも輪をかけた。再び飲食店に行くようになっても、「個人のペースで楽しめる酒」でないと需要は喚起できない。
ビール各社も「スロードリンク」や「スマートドリンキング」といった標語を掲げており、もはや量で稼ぐビジネスモデルではなくなった。その分、単価がやや高くても買ってもらえる商品を突き詰めねばならない。
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キリンがビール離れを猛省 2割高い「クラフト」に懸ける - 日経ビジネスオンライン
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