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恋愛至上主義という言葉が日本にはある。故・瀬戸内寂聴氏は「恋と革命」と繰り返し言ったことで有名だが、元ネタは太宰治『斜陽』の中の「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」という言葉だろう。
なぜに日本では恋愛がかくも崇高なものになったのか。恋愛中の人間の判断ほどヤバいものはないし、軽い狂気の状態にある人間を描くことが文学でもなかろう。恋愛至上主義の英訳はLOVE SUPREMACISMらしいが、それだと西洋の人々はアガペー(神の人間に対する「愛」)とかキリストの愛を思い浮かべるだろう。LOVEではなくROMANCEという言葉のほうが適当ではないか。ロマンス至上主義、である。
そのあたりの日本文学の奇妙な特性を、「ロマンチック・ラブという『病』」と喝破したのがイザベラ・ディオニシオ著『女を書けない文豪(オトコ)たち イタリア人が偏愛する日本近現代文学』(KADOKAWA、1815円)だ。
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